ウェブデータドリブン

自社サイトのデータを分析して、もっと成果を伸ばしたいと考えたとき、多くの方がまずGA4(Googleアナリティクス4)の設定や、レポート作成から始めようとします。

そして、ツールの見方を必死に勉強したり、レポートの作り方や操作方法を覚えようと奮闘したりします。しかし、ここで少しだけ立ち止まって、自分自身に問いかけてみてください。

データが見えるようになったとして、一体なにを分析し、サイトのどこを改善したいのか、具体的な計画はありますか?

実は、多くの方が、データが手元に揃いさえすれば、自分たちのやるべきことが自然と明確になるはず、と勘違いしてしまいます。しかし、いざレポートを目の前にすると、どの数字が良いのか悪いのかが判断できず、結局何をすればいいのか分からないまま画面を閉じてしまうのです。

日々、多くのお客様からデータ分析のご相談を受ける私たちのもとにも、GA4の見方を教えてほしい、レポートを作りたい、というご要望が多く寄せられます。

しかし、データを見る前の準備ができていないために、せっかく作ったレポートを誰も見なくなってしまい、サイトの改善も途中で止まってしまった事例を、これまでに何度も目にしてきました。

もし、目的や現在地が分からないままデータの海に飛び込んでしまったらどうなるでしょうか。

ただ数字の波を眺めるだけで時間が過ぎ、改善の手がかりも掴めず、最終的にはデータを見るのが嫌になってしまいます。これでは、せっかくの努力も時間も非常にもったいないですよね。

データ分析を成功させるために本当に必要なのは、ツールの操作方法を覚えることではありません。データを見る前に、事業としての目標と、ユーザーに歩いてもらう道筋をはっきりとさせておくことです。

この記事では、データ分析に挫折しそうになっている担当者の方に向けて、ツールを開く前にやるべき準備と、迷わずに成果を出していくための具体的なロードマップを解説します。

この記事のゴール

  • なぜ、いきなりGA4やレポートを作ると失敗するのか、その本質的な理由が腑に落ちます。
  • 難しい数字の計算が苦手でも、自社の進むべき目標を迷わずに決められる考え方が身につきます。
  • 他社の平均値に惑わされず、自社のペースで着実に成果を伸ばすための3ステップ・ロードマップが手に入ります。

データに振り回される日々から抜け出し、自信を持ってサイトを改善していくための第一歩を、ここから一緒に踏み出していきましょう。

【大前提】いきなりGA4を見ることやレポート作成から始めてはいけない

 

データ分析をしてサイトを良くしよう、と考えたときに、真っ先にGA4の管理画面を開いたり、データポータルなどのツールでレポートの形を整えようとしたりするのは、実は大きな間違いです。

多くのウェブ担当者や経営者の方がここからスタートして挫折してしまうのには、ツール自体の難しさではなく、もっと根本的なデータと目標の関係性に原因があります。

なぜ、いきなり画面を見たりレポートを作ったりしてはいけないのか、その理由を分かりやすく解説します。

① データは答えを出す水晶玉ではない。目的地を示す計器である

多くの人が抱いている誤解は、データは自分たちの進むべき道を教えてくれる魔法の水晶玉である、という考え方です。しかし、データの本当の役割は、車を運転するときに目の前にあるスピードメーターや燃料計のような計器です。

たとえば、車のスピードメーターが80キロを示していて、燃料計が半分残っているとします。この数字自体は、良いことでしょうか、それとも悪いことでしょうか?

これだけでは判断できませんよね。

もし、あなたの目的地が残り10キロの場所であれば、スピードも燃料も十分であり、まったく問題ありません。しかし、もし目的地が500キロ先の遠い場所であれば、今の燃料では途中でガス欠になってしまうため、給油場所を探す必要があります。

データ分析も、これとまったく同じです。目的地、つまり事業としての明確な目標が決まっていない状態で、アクセス数や離脱率といった数字だけを見ても、それが順調に進んでいるのか、それとも今すぐ対策が必要なのかを判断することはできません。目的地がないデータは、ただの数字の羅列に過ぎないのです。

② データを見る前に、道筋と目的地を明確にする

車を走らせるときに目的地が必要なように、ウェブサイトでもデータを見る前に、ユーザーに歩いてもらう道と、最終的にたどり着いてほしい目的地をはっきりと決めておく必要があります。

そもそもサイト分析とは、ウェブサイトで設計したユーザーの歩く道に、つまずいてしまうような大きな石が落ちていないかを確認する作業です。もし、その道自体が設計されていなければ、ユーザーがどこで迷子になっているのか、なぜ帰ってしまったのかを特定することはできません。

たとえば、以下のようなユーザーの歩く道を、頭の中で描いておきます。

  1. SNSからお役立ち記事のページに来てもらう
  2. 記事を読んだあとに、資料ダウンロードのボタンを押してもらう
  3. お問い合わせの入力フォームに進んでもらう
  4. 最後に、送信完了ページ(目的地)にたどり着いてもらう

このようにユーザーが歩く道をしっかりと設計しているからこそ、初めてGA4のデータを見たときに、記事からダウンロードボタンに進むところで半分以上のユーザーがいなくなっている、という改善したい数字(つまずいている場所)に気づくことができます。ツールを開く前にやるべき準備とは、この道筋と目的地を自分たちの中で明確にしておくことなのです。

【目標設定】目標が決まらないときはビジネスから逆算する

目標を決めてからデータを見る、という手順は理解できても、実際に自社の目標を設定しようとすると、立ち止まってしまう人は非常に多いのではないでしょうか。

今期の成約率を何%にするべきか、毎月の問い合わせ数を何件に設定すれば妥当なのか、判断するための材料がないため、決められなくて当然です。

もし、ウェブの目標をうまく決められないときは、一度データから目を離して、みなさんが日々行っている実際の営業活動から逆算して考えてみましょう。驚くほどシンプルに、自社の目標が見えてきます。

① 画面の数字ではなく、普段の営業活動から逆算する

ウェブサイトは、インターネット上にポツンと存在する独立したものではありません。あなたの会社の営業部員であり、実際のビジネスの一部です。そのため、ウェブの目標は、普段の営業活動のお金や人の流れから逆算して決めるのが最も自然です。

たとえば、以下のように普段のビジネスの流れを振り返ってみましょう。

  • ビジネスを継続するために、ウェブ経由で毎月あと5件の新規契約が欲しい。
  • 普段の営業では、商談をしたお客様の5人に1人(20%)が契約してくれている。
  • ということは、毎月5件の契約を得るためには、毎月25件の商談(問い合わせ)が必要になる。

いかがでしょうか。このように考えると、ウェブサイトが達成すべき目標は、毎月25件の問い合わせを獲得すること、と非常にシンプルに、そして納得感を持って決定することができます。

このとき、他社の平均値を調べる必要はありません。まずは、自社の営業活動を維持するために最低限必要な問い合わせ数を、最初の目標に設定してみましょう。

② まずは現状を正確に測定することを最初の目標にする

そうは言っても、ビジネスモデルによっては、成約率や必要数をきれいに計算するのが難しい場合もありますよね。そのときは、無理に高い数値目標を設定しようとする必要はありません。

目標設定で最も大切なのは、最初から大きな数字を掲げることではなく、現在の数値を正確に測定することを最初の目標にすることです。

まだ計測を始めていないのであれば、自社のサイトから今、毎月何件の問い合わせがあるのかすら誰も把握できていないかもしれません。その状態のまま、来月は50件にしよう、と目標を決めても、それはただの当てずっぽうになってしまいます。

まずは、最初の1ヶ月間で問い合わせの件数を正確に計測してみましょう。そして、現状が毎月10件だと分かったら、来月はそれを12件に増やそう、と初めて現実的な目標を立てることができます。まずは現状を知るという小さな一歩も、立派な第一の目標なのです。

【ロードマップ】初心者が迷わず進めるためのサイト改善3ステップ

目標の決め方と、ユーザーの歩く道筋の重要性が分かったところで、いよいよ具体的な改善のロードマップに進みましょう。

まだ何もできていないという初心者の場合、いきなり難しいデータ分析を始めようとする必要はありません。まずは、以下の3つのステップを順番に進めていくことで、挫折することなく、確実にウェブサイトの成果を伸ばしていくことができます。

ステップ1:【見える化期】まずは自社のデータを計測できる準備をする

サイト改善をダイエットに例えるなら、この最初のステップは、毎日体重計に乗る習慣をつけることです。

ダイエットを始めるとき、まずは今の体重を知る必要がありますよね。ウェブサイトにおける体重計とは、ひとつにGA4のことを指します。

この時期にやるべきことは、データを分析することではなく、自社のサイトから発生した問い合わせや購入の数が、GA4で計測できている状態を作ること、それだけです。

現状の数値が測れている状態があって初めて、次のステップに進むことができます。まずは、データが正しく溜まる環境を整えることから始めましょう。

ステップ2:【健康診断期】最も漏れの大きいバケツの穴を1箇所だけ塞ぐ

データが1ヶ月分ほど溜まったら、次に行うのはサイトの健康診断です。

ここでは、サイト全体のデータを見て一喜一憂するのではなく、コンバージョン(成果)に最も近いバケツの底、つまり問い合わせフォームやカート画面のデータだけを見ます。

サイト改善において、最も早く、そして確実に成果が出るのは、一番ゴールに近い場所を直すことです。フォームへのアクセスはあるのに、送信完了までたどり着いているユーザーが極端に少ないなど、一番もったいない漏れが起きている場所を1箇所だけ見つけ出し、そこを優先して改善(治療)します。

全体のアクセス数を増やす前に、まずは一番大きなバケツの穴を塞ぐこと。これが、無駄な広告費や時間をかけずに成果を最大化するための賢い進め方です。

ステップ3:【体質改善期】過去の自社データと比較して改善を繰り返す

バケツの穴を塞ぎ、サイトの基礎体力が整ったら、いよいよ定期的に改善を繰り返していくステップです。

この段階になって初めて、データポータルなどを活用して、毎月の数値を自動で確認できるシンプルなレポート(ダッシュボード)を作成・導入するのもいいかと思います。

レポートを見る際に意識することは、他社の平均値と比較することではありません。先月や去年の自社データと比べて、数値が良くなっているかどうかを比較することです。

先月と比べて、問い合わせ数は増えたか? フォームの離脱率は下がったか? といった自社の変化を追いかけながら、仮説と検証を実直に繰り返していきます。これこそが、変化の激しい時代でも、自社サイトを右肩上がりに成長させていくための本質的な取り組み方です。

他社との比較ではなく、過去の自社を超えていこう

お疲れ様でした!ウェブサイトのデータ分析を始める前に準備するべきことについて、その理由から具体的な目標の決め方、改善を進めるロードマップまで、押さえるべきポイントを整理してきました。

最後に、この記事の重要ポイントを3つに整理して振り返りましょう。

  • データは目的地があって初めて機能する
    いきなりGA4を見たりレポートを作ったりする前に、事業としての目標(目的地)と、ユーザーに歩いてもらう道筋(導線)を明確にすることが先決です。
  • 目標はリアルな営業活動から逆算する
    ウェブ独自の難しい数値目標を決める必要はありません。普段行っている営業活動の流れから逆算すれば、自社が目指すべき目標はシンプルに導き出すことができます。
  • 比較すべきは、他社の平均ではなく過去の自社
    他社との比較に惑わされる必要はありません。計測の環境を整え、最も漏れの大きい場所を直し、過去の自社データと比較しながら一歩ずつ改善を重ねていくことが大切です。

ウェブのデータ分析と聞くと、最新のツールを使いこなし、複雑なグラフを読み解くような難しいイメージを持っていた方も多いかもしれません。

しかし、こうした本質的な考え方を理解することで、本当にやるべきことは、目の前のユーザーの動きに関心を持ち、歩きやすいように道を整えてあげるという、とても実直な配慮の積み重ねであると気づいていただけたのではないでしょうか。

明日からできる、スモールアクション

自社サイトをデータに振り回されずに改善していくために、明日からできる小さな一歩をご紹介します。

A4の紙を1枚用意し、自社サイトに来たユーザーに「どんな順番でページを歩いてほしいか」を、矢印を使って手書きで書き出してみる

パソコンを開く必要すらありません。自分たちがユーザーに歩いてほしい理想の道筋を紙に描いてみる。このシンプルなステップこそが、GA4のデータを宝の山に変えるための、最も重要で価値のある準備になります。

他社の高い実績や、複雑なレポートに惑わされる必要はありません。ユーザーを最優先にするという基本を、これからも実直に積み重ねていきたいですね。