ウェブデータドリブン

突然ですが、みなさんに一つ質問です。
日々のウェブサイト運用で、以下のようなことばかりに頭を悩ませてはいませんか?

  • 「今月はどの広告から、一番コンバージョン(成果)が出たんだろう?」
  • 「最近話題のAI検索から、うちのサイトにはどれくらいアクセスがある?」
  • 「上司やクライアントから『とにかくアクセスを増やせ』と言われ、数字に追われている」

アクセス元(流入経路)のデータは動きが大きく目立ちやすいため、どうしても真っ先に気になってしまいますよね。また、周囲からの「アクセスを増やせ」というプレッシャーに、日々頭を抱えている担当者の方も少なくありません。

日々、多くのお客様のGA4(Googleアナリティクス4)分析やサイト改善をサポートしている私たちのもとにも、こうしたご相談が本当によく寄せられます。

しかし、ここに大きな罠があります。
アクセス(流入)を増やすことだけに予算やエネルギーを注ぎ込んでいると、気づかないうちに、非常に効率の悪いサイト運用になってしまうことがあるのです。

少し、想像してみてください。

高い広告費を払って、なんとか1万人のユーザーをサイトに呼び込んだとします。しかし、もし購入手続きの入力フォームがとても使いにくいデザインだったとしたら、どうなるでしょうか?

きっと、多くのユーザーは途中で嫌になって、ページを閉じてしまいますよね。

これはまさに、穴の空いたバケツに、一生懸命に新しい水を注ぎ続けているのと同じ状態です。せっかく集めたユーザー(水)が、出口でどんどん漏れてしまっているのです。

では、どうすればこの無駄を防げるでしょうか?

答えはシンプルです。
まずバケツの穴(離脱ポイント)を塞ぎ、それから新しい水を注ぐ(流入を増やす)

ウェブサイトの改善には、明確な優先順位(セオリー)があります。それは、流入という入り口ではなく、コンバージョンという出口(ゴール)に一番近い場所から、逆算して改善していくことです。

この記事では、ついつい後回しにされがちなサイト内部の改善にスポットを当て、GA4を使ってどこから、どうやって改善していけばいいのかのセオリーを、分かりやすく紐解いていきます。

この記事のゴール

  • なぜ、入り口(流入)よりも出口(CV)の改善が先なのか。その本当の理由とメリットが腑に落ちます。
  • コンバージョンに最も近い場所から逆算して手を加える、具体的な改善のロードマップが分かります。
  • GA4を使って、ユーザーがどこでつまずいているかを特定するための視点が身につきます。

バケツの穴をきれいに塞いで、集めたアクセスを確実に成果へと繋げるために。まずは基本となる考え方から整理していきましょう。

【STEP1:出口の改善】いちばん購入してくれそうなユーザーのつまずきを解消する

さて、ここからは具体的な実践ステップに入っていきます。

最初に取り掛かるべきなのは、バケツの底、つまりウェブサイトの出口にあたる場所の改善です。具体的には、「問い合わせフォーム」「ショッピングカート」「最終確認画面」などがこれに該当します。

「えっ、いきなりそこから直すの?」と思われるかもしれません。普通はトップページや商品ページから順番に直したくなりますよね。でも、実はここから始めるのが最も効率的なのです。その理由を、リアルの店舗に例えてお話ししますね。

レジの行列で商品を諦めるお客様を救い出す

想像してみてください。あなたはあるお店に入り、欲しい商品を見つけ、それを手に持ってレジの列に並びました。買う気は満々、お財布も出しています。

ところが、レジの担当者が不慣れで大渋滞。さらに「会員登録をしないと買えません」「このカードは使えません」と次々に面倒な手続きを要求されます。イライラしたあなたは、ついに購入を諦め、商品を棚に戻して店を出てしまいました……。

お店の側から見れば、これほどもったいない損失はありませんよね。だって、そのお客様はあとはお金を払うだけの、最も購入意欲が高い状態だったのですから。

これと全く同じ悲劇が、ウェブサイトの入力フォームやカート画面で毎日起きています。

  • 入力項目が多すぎて面倒になり、途中でやめてしまう
  • エラー表示が出たけれど、どこを直せばいいのか分からない
  • スマホだとボタンが小さすぎて押しづらい

こうした出口でのつまずきを解消してあげるだけで、新しくアクセスを増やさなくても、成果(コンバージョン)の数が一気に増えるケースは少なくありません。だからこそ、ここが最優先なのです。

GA4で出口の離脱をあぶり出す方法

では、こういった状況があなたのウェブサイトでどれくらい起きているのか、GA4を使って確認してみましょう。

ここで活躍するのが、GA4の目標到達プロセス探索(ファネルデータ探索)という機能です。ユーザーがゴールに至るまでの道のりを、階段のようなグラフで視覚化してくれるものです。

確認のステップ

  1. GA4のメニューから「探索」を選び、「ファネルデータ探索」を作成します。
  2. ユーザーが進む手順(例:商品詳細ページ ➔ カート画面 ➔ 入力フォーム ➔ 完了画面など)を登録します。
  3. 出来上がったグラフを見て、どのステップで、一番急激にユーザーが減っているかを探します。

もし、カートから入力フォームに進む段階で8割の人がいなくなっているとしたら、カート画面のボタンの配置や、システムに何らかの不具合(つまずき)がある可能性が高い、と予測できますよね。

このステップでの具体的な改善の考え方

離脱ポイントが見つかったら、実際のページをパソコンやスマホで触ってみましょう。その際、以下の視点を持ってチェックするのがコツです。

  • 「本当にその入力項目は必要?」郵便番号を入れたら住所が自動入力されるか、必須項目は最小限になっているか。
  • 「なぜエラーか教えてくれている?」赤文字で「入力エラーです」とだけ書かれても困ります。「半角数字で入力してください」のように、次の行動を優しくナビゲートできているか。
  • 「ボタンはスムーズに押せる?」スマホでもストレスなく操作できる大きさ、押しやすい位置にボタンがあるか。

これだけで成果が100%改善するわけではありませんが、多くのケースにおいて、最も費用対効果が高い改善手法になります。一番購入してくれる可能性のあるユーザーを、まずはゴールへお見送りする準備を整えましょう。

【STEP2:ページの改善】思っていたのと違うというギャップをなくす

出口の穴をきれいに塞いだら、次は、そのもう一歩手前に進みましょう。

ユーザーに「よし、買おう!」「一度問い合わせてみよう!」と決意してもらうための場所、つまり「ランディングページ(LP)」「商品詳細ページ」「サービス紹介ページ」などのページの改善です。

出口は整っているのに、そもそもそこまでユーザーが進んでくれないとしたら、これらのページでユーザーの心が離れてしまっている可能性が高いと言えます。

「お買い得!」に誘われて入店したけれど……

ここでも、お店の例えで考えてみましょう。

街を歩いていると、「今だけ、無農薬の美味しいリンゴが特別価格!」という大きな看板が目に入りました。気になったあなたは、お店の中に一歩足を踏み入れます。

ところが、店内の棚に並んでいたのは、どこにでもある普通のリンゴ。値段も特別安くはありません。看板に書かれていた無農薬や特別価格についての説明も一切なし。……あなたはどんな気持ちになりますか?

きっと、「なんだ、思っていたのと違うな」とがっかりして、すぐに店を出てしまいますよね。

これと全く同じことが、ウェブサイトでも頻繁に起きています。

メルマガや広告で「これ、すごく良いですよ!」と期待を膨らませてページに呼んだのに、肝心のページを開いたら、読者が一番知りたかった情報がどこにあるのか分からない、あるいは求めていた内容と違っている。この期待と現実のギャップこそが、離脱を生む最大の原因です。

GA4で読者の退屈・がっかりをキャッチする2つの指標

ユーザーがページを開いてがっかりしたか、それとも熱心に読んでくれたかは、GA4の2つの指標を見ることで分かります。旧UA時代の直帰率よりも、もっとユーザーの気持ちに寄り添った指標です。

確認するには、GA4のメニューから「レポート」➔「エンゲージメント」➔「ランディング ページ」を開きます。

  • 指標①:セッションあたりの平均エンゲージメント時間
    ユーザーがそのページを実際にしっかり見ていた、1回あたりの平均時間です。例えば、じっくり読むのに3分かかるボリュームの記事なのに、15秒しかなかったとしたら……。悲しいですが、ほとんど読まれずにスルーされているという事実がわかります。
  • 指標②:セッション キーイベント率
    簡単に言うと、そのページから始まったアクセスのうち、実際に購入や問い合わせなどの成果(※GA4では成果のことをキーイベントと呼びます)に至った人の割合です。この数値が著しく低いなら、そのページが読者を納得させるための役割を十分に果たせていない可能性があります。説明が不十分だったり、読者が抱く疑問や不安を解消できておらず、購入に向かわせる強い動機を与えられていない、という課題が見えてきます。

このステップでの具体的な改善の考え方

もし、GA4のデータから「このページ、全然読まれていないぞ」と分かったら、ページの内容を以下のような視点で見直してみましょう。

  • 「最初の3秒で、何ができるページか伝わる?」ページを開いた瞬間(ファーストビュー)に、メルマガや広告で約束した一番伝えたかったことがドカンと目に入ってくるか。
  • 「読者にとっての自分ごとになっている?」商品のスペック(機能)ばかりを並べるのではなく、これを使うと、あなたの生活(仕事)がどう良くなるか(ベネフィット)が語られているか。
  • 「次のステップ(CTA)は分かりやすい?」ページを読み進めてなるほど、良さそうだなと思った瞬間に、目立つ購入ボタンや問い合わせリンクが適切な場所にあるか。

メルマガとページの二人三脚がしっかり機能すれば、ユーザーは迷うことなく、出口へとスムーズに進んでくれるようになります。

【STEP3:入り口の改善】ただのアクセスを質の高いアクセスに変える

出口をきれいに整え、ページのギャップもなくしました。これでバケツは、しっかりと水を受け止める準備ができています。

さあ、いよいよ最後のステップ、ユーザーを呼び込む【入り口(流入)】の改善です!

「よし、これでやっと広告を出せる!」「SNSを頑張れる!」とワクワクしますよね。ここで流入を増やす施策を行うからこそ、これまでの努力が何倍、何十倍もの成果となって返ってくるのです。もしSTEP1と2を飛ばしてここにお金をかけていたら……と考えると、少しゾッとしませんか?

「たくさん集める」から「相性の良い人を呼び込む」へ

流入の改善と聞くと、多くの人がとにかくアクセス数を増やそうと考えがちです。しかし、ここでも数(量)ではなく質(相性)に目を向けましょう。

たとえば、以下の2つのケース、どちらがビジネスにとって嬉しいでしょうか?

  • ケースA:広告で1万人がサイトに来てくれたが、購入したのは「0人」(コンバージョン率 0%)
  • ケースB:メルマガで100人がサイトに来てくれて、購入したのは「10人」(コンバージョン率 10%)

言うまでもなく、嬉しいのはケースBですよね。たくさん人が来ても、自社のサービスに興味のない人ばかりでは意味がありません。目指すべきは、サイトの価値を理解してくれる相性の良いユーザーに、狙いすまして来てもらうことです。

GA4で本当に優秀な入り口を見極める

では、どの流入経路(メルマガ、自然検索、広告、SNSなど)が、ビジネスに貢献してくれているのか、GA4で答え合わせをしてみましょう。

確認するには、GA4の左側メニューから「レポート」➔「集客」➔「トラフィック獲得」を開きます。

ここで確認したい指標は、表の中央付近にあるキーイベントの数です。その経路から来た人が、最終的に購入や問い合わせといった実際の成果を何回生み出してくれたかを表しています。

このデータを見ることで、以下のような真実が見えてきます。

  • 「SNSはたくさんの人をサイトに連れてきてくれているけれど、実際の成果はほとんど発生していないな……」
  • 「毎月送っているメルマガはアクセス数自体は少ないけれど、安定して多くの成果を生み出してくれている!」

ここまで分かれば、次の一手は明確ですよね。ただ人がたくさん来ているだけの場所ではなく、実際に多くの成果(キーイベント)を連れてきてくれる優秀な入り口に、より力を入れていく方が、はるかに賢く成果を伸ばすことができます。

データを使って仮説を立て、小さく試す

マーケティングの世界に一発必中の魔法はありません。大切なのは、データをもとに小さな実験を繰り返すことです。最後に、そのための基本ステップをご紹介します。

  1. データから「なぜ?」を見つける(問い)
    「先月のメルマガは、いつもよりコンバージョン率が高かったな。なぜだろう?」
  2. 「こうかもしれない」と考える(仮説)
    「いつもは商品の紹介ばかりだけど、先月は『お客様の活用事例』を中心に書いたから、読者が自分ごととしてイメージしやすかったのかもしれないな」
  3. 実際に試してみる(検証)
    「じゃあ、次のメルマガでも『別のお客様の事例』を大きく取り上げて、効果を比較してみよう」

このように、データは直接正解を教えてはくれませんが、次の実験をするためのヒントをたくさん散りばめてくれています。この仮説と検証のキャッチボールこそが、ウェブサイトの成果を右肩上がりに成長させていく唯一の方法なのです。

今日から変える、サイト改善の第一歩

お疲れ様でした!ここまで、ウェブサイトの成果を最大化するための3つの改善ステップをお伝えしてきました。

最後に、最重要ポイントを振り返りましょう。

  • STEP1:出口の改善(最優先)
    まずは入力フォームやカートの使いやすさを整え、バケツの底の穴をしっかりと塞ぎます。
  • STEP2:説得ページの改善(2番目)
    メルマガや広告で抱いた期待と、ページの現実のギャップをなくし、ユーザーに納得して出口へと進んでもらいます。
  • STEP3:入り口の改善(最後)
    アクセス数という量だけに惑わされず、コンバージョン率の高い優秀な入り口を見極めます。

これまで「アクセス数が増えない」とか「どの流入経路が良いのか」ばかりを気にしていた方にとっては、このゴールから逆算するというセオリーは、少し新鮮に映ったでしょうか?

この順番を意識するだけで、無駄な広告費を抑え、今あるアクセスを最大限に成果へと変えていくことができるようになります。

明日からできる、スモールアクション

「よし、やるぞ!」と気合を入れるのは素晴らしいですが、いきなりGA4と格闘する必要はありません。まずは、超簡単なスモールアクションを一つだけ試してみてください。

自分のスマートフォンの画面で、自社の問い合わせフォーム(または購入画面)から、テスト送信をしてみる

ユーザーの気持ちになりきって触ってみると、「あれ、ここのボタン押しづらいな」「この入力項目、本当に必要かな?」といった気づきが、きっと一つは見つかるはずです。その小さな気づきこそが、データ分析とサイト改善の最も大切な原点です。

GA4のデータは、あなたのサイトを訪れるユーザーからの声なきラブレターやSOSのサインです。一歩ずつ、その声に耳を傾けながら、より愛されるウェブサイトを一緒に育てていきましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。あなたのサイト運用が、より良く、そして確かな成果に繋がることを応援しております。