ウェブデータドリブン

実店舗のビジネスをマーケティング支援している中で、平日の集客や売上の落ち込みに頭を悩ませている方が多くいます。

土日や祝日はお客様で賑わい、時には満席でお断りしなければならないほど忙しいのに、平日の昼間になると客足が途絶えて静まり返ってしまう。この平日と休日のギャップは、店舗ビジネスが抱える極めて深刻な課題です。

なんとか平日の売上を補おうと、多くの店舗が「平日は全品10%オフ」といった安易な割引キャンペーンやハッピーアワーを始めてしまいます。しかし、これはただでさえ少ない平日の売上からさらに大切な利益を削り、店舗の体力をじわじわと奪うだけの、非常に危険な選択です。

日々、集客やマーケティングをサポートしている私たちのもとにも、平日のデッドタイム(空き時間)をどうにかして埋めたい、というご相談が寄せられます。

実は、平日の売上が上がらないのは、チラシの配り方やSNSでのアピールが足りないからではありません。平日のお客様のライフスタイルや行動パターンに合わせた、正しい平日集客の基本原理が抜けていることが原因なのです。

土日と同じサービスを、ただ安くして売るのを一度やめてみましょう。平日にしか動けないお客様にとっての新しい価値を店舗の中に設計し直すこと。これこそが、安売りに頼らず、平日の売上を土日に近づけるための、最も手堅くて確実な進め方です。

この記事では、実店舗が明日から実践できる平日集客の3つの法則を解説します。自社やクライアントの店舗が抱えるバケツの穴を特定し、無駄のない店舗改善をおこないましょう。

この記事のゴール

  • なぜ、安易な割引キャンペーンが店舗の経営を圧迫してしまうのか、その本質的な理由が分かります。
  • 平日にしか動けないお客様に向けた、平日の売上を伸ばす3つのマーケティングの法則が理解できます。
  • 店舗のデータから、どの法則を使って平日を予約で埋めるべきかの確認手順が身につきます。

なぜ平日の割引キャンペーンは失敗するのか?

平日の予約が埋まらない、客足が遠のいている、と感じたときに、多くの店舗の経営者や支援会社が真っ先に考えてしまうのが、平日は全品10%オフや、雨の日クーポンといった割引キャンペーンです。

確かに、安くすれば一時的に人は動くかもしれません。しかし、値引きは長い目で見ると店舗の経営をじわじわと苦しめる、非常に危険な行為です。

なぜ、平日の割引キャンペーンが失敗に終わってしまうのか、その理由を2つの視点から整理します。

① 利益を削るだけの割引は、店舗の体力を奪うだけである

平日限定の割引キャンペーンが失敗する最大の理由は、新しくお店に来てくれるお客様が増えるのではなく、もともと定価で来てくれるはずだったお客様が、ただ安く利用するだけになってしまうからです。

たとえば、普段からあなたのお店を気に入って、週に1回通ってくれている常連のお客様がいたとします。そのお客様が、水曜日は10%オフ、というキャンペーンを見たらどう思うでしょうか?

「じゃあ、今週は水曜日に行こう」と思いますよね。

お店側からすると、お客様の来店数は変わっていないのに、得られるはずだった売上だけが10%減ってしまったことになります。これでは、忙しさは変わらないのに手元に残るお金だけが減り、店舗の体力をただ奪うだけになってしまいます。利益を削るだけの安易な割引は、自らの首を絞めることになりかねません。

② 土日と同じ価値を同じお客様に売ろうとしてはいけない

平日に客足が伸びないもう一つの理由は、土日に来てくれるお客様と同じターゲットに対して、まったく同じメニューやサービスを売ろうとしているからです。

土日と平日では、街を歩いている人の層も、お客様が使える時間も、抱えている悩みも、まったく異なります。

土日のお客様は、家族や友人と過ごすレジャーや、まとまった自由時間、を求めてお店にやってきます。一方で、平日の日中にお店を利用できるのは、自由に使える時間がある主婦層、シニア層、あるいは、自宅の近くやオフィスの周辺で働く人やフリーランスであることが多いでしょう。

それなのに、平日の日中に土日と同じサービスを、ただ安くして提供しても、平日の限られた時間の中で動いているお客様には響きません。土日と平日では、お客様が求めている価値そのものが異なる、という大前提を理解することが何よりも大切です。

平日の売上を伸ばす3つの法則

では、どのようにして平日の売上を増やせば良いのでしょうか。

その答えは、平日には平日のライフスタイルに合わせた価値を、平日に動けるお客様に届けることです。割引に頼らず、自社やクライアントの店舗に平日の安定した売上をもたらすための、3つの法則をご紹介します。

① 法則1:平日に動ける特定のターゲットへ訴求を切り替える

1つ目の法則は、平日に自由な時間を持っているお客様にターゲットを絞り、そのお客様向けのメニューやサービスへと訴求(売り出し方)を切り替えることです。

たとえば、高級住宅街やオフィス街に近い完全予約制のヘアメイクサロンを例に考えてみましょう。

平日の日中は、子どもの見送りや家事を済ませて一息ついた、主婦層やセレブマダム層が自由に動ける時間帯です。彼女たちは、平日のランチタイムにホテルや高級カフェで友人と過ごす機会が多いのではないでしょうか。

このお客様に対して、イベント向けのような華やかなヘアメイクを提案しても響きません。そうではなく、「大人の艶肌ナチュラルメイク&ブローセット」のように、昼の自然光の下で上品で若々しく見える、ランチやお出かけ向けのスタイリングメニューを提案するのです。ターゲットを平日に動ける人に絞り、その人の生活習慣に合わせた価値を用意する。これが、平日の日中を予約で埋めるための考え方です。

② 法則2:サブスクや定額パスで平日に通う動機を作る

2つ目の法則は、お客様に、平日にその店に行く理由をはじめから持ってもらう、定額制(サブスクリプション)の仕組みを作ることです。

事前に支払いを済ませているものに対しては、行かなければ損だ、という心理が働きます。この仕組みを、平日の来店促進に活用します。

たとえば、カフェなどの飲食店を例に考えてみましょう。

平日の客足を安定させるために、「毎日ドリップコーヒー1杯無料パス(月額定額)」を販売してみてはどうでしょうか。ユーザーではなく、購入してくれたお客様は、元を取ろうとして平日に進んで来店してくれるようになります。そして、コーヒーを受け取るついでに、ランチのサンドイッチや焼き菓子をついで買いしてくれる可能性があるため、結果として平日の売上の土台が安定するようになります。

毎回ゼロから集客しようとするのではなく、あらかじめ平日に通う習慣を作ってもらうこと。これが、売上の波をなくすための方法のひとつです。

③ 法則3:デッドタイムを体験価値に変換する

3つ目の法則は、店舗の中で最もお客様が少なくなる時間帯(デッドタイム)を、逆手に取って別の体験価値へと変換することです。

たとえば、英会話などの、資格取得のためのスクールなどを例に考えてみましょう。

こうしたスクールでは、お客様の多くが会社員であるため、平日の13:00〜16:00といった日中の時間帯は、教室が空いている魔の時間帯になります。そこで、この静かであること(他のお客様が誰もいないこと)を、特別な体験価値に変えてみましょう。

この時間帯限定で、「マンツーマン集中個別レッスン」といった、特別なマンツーマンの指導枠を設定するのはいかがでしょうか。夜の混雑する時間帯では、どうしても周りの声が気になって集中できなかったり、質問がしづらかったりします。しかし、他のお客様が誰もいない平日の日中であれば、講師を独り占めして、静かな環境で集中して学ぶことができます。これは、時間に融通が利くリモートワーカーやフリーランスのお客様にとって、魅力的なプレミアム枠になります。

店舗側にとっては、ただの空き時間だった教室が、最も単価が高く価値のある個別レッスン枠へと生まれ変わります。人がいない、というデメリットを静かで集中できる空間というメリットに変換することで、平日の売上の穴は塞がっていきます。

自社の店舗でどの法則を使うべきかを見極める方法

では、店舗では、一体どれから順番に手をつけるべきなのでしょうか。

簡単で確実な2つのセルフチェックをご紹介します。勘に頼らず、まずは手元にあるデータを確認することから始めましょう。

まずは平日の何時頃にお客様が減っているかをデータで確認する

最初のステップは、平日の中で本当にお客様が遠のいている時間帯はどこなのかを特定することです。

多くの店舗経営者の方は、平日はなんとなく暇だ、という肌感覚だけで動いてしまいがちです。しかし、まずは予約管理システムやPOSレジのデータを開き、曜日ごと、時間帯ごとの来店数(または売上)をグラフにしてみてください。

データを見ることで、火曜日の午前中だけが極端に空いている、や、水曜日の14:00〜16:00だけがぽっかりと予約が空いている、といった、本当のボトルネックが浮き彫りになります。まずは、直すべき時間帯をピンポイントで特定しましょう。

その時間帯に身動きがとれるお客様の生活習慣を調べる

穴が空いている時間帯が特定できたら、次のステップは、その時間帯に自由に動けるお客様は誰なのかを考え、そのお客様の生活習慣(ライフスタイル)を詳しく調べることです。

たとえば、空いている時間帯が火曜日の午前中だった場合、その時間のお客様は、会社員ではなく、主婦層やシニア層、あるいは時間を自由にコントロールできるフリーランスのお客様になります。

次に、そのお客様たちの普段の生活習慣を考えてみましょう。主婦層であれば、子どもを学校に送り出した後の10:00〜12:00は最も動きやすい時間ですし、シニア層であれば、朝の早い時間帯ほど活動的です。その時間帯とお客様の生活習慣が重なる場所に、先ほどの3つの法則をあてはめて新メニューを設計します。お客様の生活サイクルにぴったり寄り添うからこそ、平日の空き枠は自然と予約で埋まるようになるのです。

まとめ:平日の提供価値を再設計しよう

お疲れ様でした!実店舗ビジネスにおいて最も深刻な悩みである平日の客足の落ち込みに対して、安易な割引に頼らず、平日の売上の穴を塞ぐための考え方と、3つの法則をお伝えしてきました。

最後に、この記事の重要ポイントを3つに整理して振り返りましょう。

  • 安易な割引キャンペーンはやらない
    一律の値引きは既存のお客様が安く利用するだけになり、店舗の利益を削ってしまいます。割引ではなく、平日の価値そのものを変える意識が大切です。
  • 平日のお客様のライフスタイルに合わせた価値を届ける
    平日に動けるターゲットへの訴求の切り替え、3つの法則を自社にあてはめてみましょう。
  • データをもとに、空いている時間帯を特定する
    予約データやPOSレジのデータなどから、いつお客様が減っているのか、数値で確認することから始めます。

平日にお客様が来ないのは、店舗の魅力がないからではありません。平日の数字を正しく見て、平日のための適切な準備が整っていないだけなのです。

ビジネスを伸ばす本質は、データに基づくPDCAサイクルを回し続けること

今回ご紹介した平日集客の3つの法則は、一度設定して終わりではありません。データをもとにPDCAサイクルを回し続けることが、ビジネスを根本から成長させるための手段です。

まずは、現状の課題を見える化する(データ収集・分析)。次に、仮説を立てて実行する(仮説・実行)。そして、売上が増えたのか、データを見て確認する(効果検証)。

このサイクルを実直に回し続けることこそが、店舗の経営を予測可能で安定した投資へと変えていく方法です。